空洞席

0
1

紙戻し課の奥には、誰も座っていない席が並んでいる。

ただし、空ではない。

古い紙箱。
予備の椅子。
壊れた印箱。
前任者の名札。
いつか使う写し札。

机の上にも下にも、置き場のないものが積まれていた。

「空き席じゃないのか」

タカシが聞くと、紙戻し騎士長は首を振った。

「席は足りています。片付ける者が足りないのです」

昼過ぎ、呼出札が鳴った。

着席者決定。

紙戻し課の者たちは急に紙箱を運び始めた。
古い札を剥がし、机を拭き、壊れた印箱を足元へ押し込む。

「来るのか」

セウゴが聞いた。

「座る者が決まりました」

夕方、片付いた椅子に薄い影が腰かけた。

顔は見えない。
ただ、手だけが紙をめくっていた。

赤鉛筆が欄をなぞる。

確認不可。

翌朝、空洞席が一つ増えていた。

机の上には、きれいに空けた場所があった。

置き札には薄く書かれていた。

セウゴ予備。
ファンタジー
公開:26/07/16 18:00
更新:26/07/10 13:29
#紙戻し課

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容