うな重

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ある夏の日、旅人が古い町の食堂で名物のうな重を注文した。重箱のふたを開けると、香ばしい湯気とともに小さな声が聞こえた。冷める前に食べておくれ。
驚きながら一口食べると、景色は江戸時代へ変わり、町人が行き交い、職人たちが忙しくうなぎを焼いていた。
このうな重は、時をつなぐ味なんだ。

白髪の職人は笑って言う。祝いの日も旅立ちの日も、人々の思い出はたれの香りとともに次の時代へ受け継がれていくという。
気づけば旅人は元の食堂に戻り、重箱には最後の一切れだけが残っていた。店主は、お口に合いましたかと穏やかに尋ねる。
忘れられない味でした。

店を出ると、風に乗って甘辛いたれの香りが漂い、また来て下さい。と語りかけている様だった。
それ以来、旅人は人生の節目ごとにその店を訪れ、うな重を味わう時、大切な思い出が静かによみがえるのだった。
ファンタジー
公開:26/07/11 09:38

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