大工

0
1

町の小さな建築会社では、大工不足で仕事が止まりかけていた。社長は最後の手段として「見習い大工募集」の貼り紙を出したが、一週間たっても応募はなかった。肩を落として事務所へ戻ると、入口に猿が座っていた。
差し出した履歴紙には「木のぼり得意、手先器用」とある。続いて犬も現れ、履歴書には「番犬経験あり、現場管理希望」と書かれ肉球の印が押されていた。
半信半疑で採用すると、翌日から現場は一変した。猿は足場を軽やかに渡り、正確に指示を出した。犬は危険を察し、事故を未然に防いだ。こうして工事は順調に進んだ。

完成の日、施主の老人が建物を見上げて笑った。やっと返せたな。社長が尋ねると、老人は昔ここで働いていた大工で、大怪我をした猿を助け、その時に一緒に看病した犬がいたと語った。
社長は空に向かい礼を述べた。振り返ると二匹はフッと消え、事務所の壁には新しい札が掛かっていた。
「見習い募集終了」。
ファンタジー
公開:26/06/30 17:51

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容