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三枝さんは、
鍵を預かるようになった。

書庫。
備品棚。
会議室。
キャビネット。

鍵には、
小さな札がついていた。

総務が言った。

「三枝さんが持っている方が、
早いので」

三枝さんは、
輪に通された鍵を、
一つずつ確かめた。

朝、
用紙が切れると、
若手が三枝さんを見る。

昼、
会議室が空かないと、
部長が三枝さんを見る。

夕方、
共有フォルダに入れないと、
隣の席から呼ばれる。

翌週から、
上長の予定表も、
三枝さんが直すようになった。

鍵束は、
机の右上に置かれた。

そこにあると、
呼ばれる前にわかった。

ある日、
新人が言った。

「予備の鍵の場所を、
教えてもらえますか」

新人の目が、
机の右上へ動いた。

三枝さんは、
鍵束に手を添えた。

「場所だけ覚えても、
困ると思いますから」

新人は、
うなずいた。

鍵束が、
返事のように鳴った。
その他
公開:26/07/03 12:00
更新:26/06/28 18:08
#鍵束を渡された人

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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