センス研ぎ屋

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商店街の奥、
センス研ぎ屋ができた。

包丁も鋏も扱わない。
預かるのは、
盛りつけのセンス、
話し方のセンス、
距離のセンスだった。

店主はそれぞれを
小さな刃物の形にして、
砥石に当てた。

客は通った。
花を見る。
知らない店で食べる。
人と話して、
黙って帰る。

そのたびに、
帳面へ書いた。

「近すぎた」
「色を置きすぎた」
「先に笑った」

半年後、
町は少し変わった。

皿には余白ができた。
会話には間ができた。
花束には、
咲いていない枝が入った。

ただ、
前より黙る人も増えた。

量が減ったと言われて、
盛りつけを崩す人もいた。

閉店前、
店主は砥石に
手を置いた。

砥石の上には、
何もなかった。

古い帳面だけが、
客の直した跡で
厚くなっていた。

店主は閉じようとして、
指を引いた。

次の客が、
戸口で黙って待っていた。
その他
公開:26/07/03 08:25

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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