2
4
ある夜、李徴は偶然に友と再会した。
そこは故郷の、月明かりの差す山道であった。
友は以前と変わらぬ姿であったが、李徴には小さく見えた。
久闊を叙した後、李徴は故郷を離れてからのことを語った。
友は興味深そうに聞いたが、羨ましいとは思わなかった。
李徴の語り口には疲労が滲んでいたからだ。
「後悔しているのか?」
友が尋ねると、李徴は月を見上げた。
「分からぬ。だが、時折思い出すのだ」
「何を?」
「この山を」
それから二人は昔話をした。
だが、その声はどこか遠かった。
夜明けが近づく頃、李徴は立ち上がった。
「もう行くのか?」
「ああ。私は人間だからな。家に帰らねばならぬ」
李徴は去っていった。
その顔は、かつて誰よりも高みを目指し、人間になることを夢見ていた若き虎のものではなかった。
あの夜以来、友は月を見るたび思う。
李徴は人間になれて、幸福であったのかと。
そこは故郷の、月明かりの差す山道であった。
友は以前と変わらぬ姿であったが、李徴には小さく見えた。
久闊を叙した後、李徴は故郷を離れてからのことを語った。
友は興味深そうに聞いたが、羨ましいとは思わなかった。
李徴の語り口には疲労が滲んでいたからだ。
「後悔しているのか?」
友が尋ねると、李徴は月を見上げた。
「分からぬ。だが、時折思い出すのだ」
「何を?」
「この山を」
それから二人は昔話をした。
だが、その声はどこか遠かった。
夜明けが近づく頃、李徴は立ち上がった。
「もう行くのか?」
「ああ。私は人間だからな。家に帰らねばならぬ」
李徴は去っていった。
その顔は、かつて誰よりも高みを目指し、人間になることを夢見ていた若き虎のものではなかった。
あの夜以来、友は月を見るたび思う。
李徴は人間になれて、幸福であったのかと。
ファンタジー
公開:26/06/18 13:25
山月記
加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。
作品イラストはフリー素材やAIで作成したものです。
note
↓
https://note.com/a_kagami
X(Twitter)
↓
https://x.com/kagami_short2?s=21
ログインするとコメントを投稿できます
加賀美 秋彦