手放しの徳

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「失くしたものは、
執着だったってことよ」

ミラは、
きれいな顔で言った。

トーマは黙っていた。

森の奥で死んだ時、
財布と剣と、
昼に買った串焼きまで
その場に残してきた。

翌朝、
お告げギルドの遺失物係で
返還申請を書いた。

受付官セリが、
帳面を確認する。

「回収希望品は」
「財布、剣、串焼き」
「串焼きもですか」
「昼飯です」

セリは別欄を見た。

「消耗品も、
回収不能物に含まれます」

ミラが横からうなずく。

「食欲を手放したのね」
「手放してない。落とした」

セリは小さな札を渡した。

表には、再出発許可。
端には小さく、
通算死亡五回。

裏には細い字。

回収不能物。
財布、剣、串焼き。
精神的成長欄へ振替済み。
ファンタジー
公開:26/06/23 12:00
更新:26/06/23 05:22
#お告げ女神と再出発窓口

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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