第6話:名を当てた話(未使用)

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夜の森で、小さな歌が聞き取られた。
火のそばには、円を描く足跡。

藁の部屋。
金の糸。
泣いていた娘。
閉じられた扉。

それらは別々の記録に残っている。
ただ、契約書は見つからなかった。

差し出すものの欄には、
子ども、とだけあった。

娘は三日間、城の外へ人を出した。
森。丘。小屋。火の跡。

三日目の夜、歌の中から
ひとつの名が拾われた。

翌朝、娘はその名を呼んだ。
小さな者は返事をしなかった。
火は揺れず、足跡も増えなかった。

本人確認には、一致の印が押された。
契約はその場で失効とされた。
子どもの欄には、保留解除の札。

金の糸は残った。
藁も残った。
三日の猶予も残った。

ただ、呼ばれた者の欄だけが
白く削られていた。
紙の下に、細かな粉が落ちた。

係員は最後に、名札を箱へ入れた。
箱の表には、
未使用、と書かれていた。
ファンタジー
公開:26/06/19 07:00
更新:26/06/14 05:20
#童話の事後記録

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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