柿太郎の話(異本照合)

0
1

後に、別の帳面が見つかった。

討伐記録の余白に、
桃ではない実の名があった。

柿。

それを拾った家は、
正直とは記されていない。
邪慳、とだけある。

生まれた子にも名が付いた。
柿太郎。

彼は先に島へ渡った。
蛙、蟹、烏を連れていた。

同行欄の線は、
三度引き直されていた。

戦闘欄には、
敗北、とある。

次の欄には、
使役、とある。

鬼は彼を働かせた。

さらに桃の少年が来ると、
柿の少年を地獄へ走らせた。

用件欄には、
閻魔宛、とだけある。

その使いは、
到着欄だけが空白だった。

やがて鬼は討たれた。

宝は戻り、
島は静かになった。

桃の少年は、
英雄欄へ移された。

柿の少年は、
家来欄へ移された。

改心、と朱で書かれている。

悔いた者欄だけが、
きれいに削られていた。
ファンタジー
公開:26/06/19 19:00
更新:26/06/19 18:44

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容