受け皿

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門前町の瀬戸物屋で、
受け皿を売っていた。

皿はどれも平たく、
縁だけが少し高い。

「これで、
いいことを受けられますか」

若い男がたずねると、
店番の老人は
皿のほこりを払った。

「受け皿じゃ。
取り皿ではない」

男は一枚買って帰った。

翌朝から、
胸の前に皿を構えて出かけた。

面接の前。
告白の前。
古い友人が、
道の向こうで手を振った時。

皿を持つ指に、
少し力が入った。

名刺。
返事。
小さな誘い。

どれも縁に触れ、
白い音を立てて
すべり落ちた。

噂を聞いた近所の人も、
一日ずつ借りに来た。

返す時だけ、
みな上手に笑った。

夕方、
男は皿を卓に置いた。

手を添えず、
ただ置いた。

夜のあいだ、
皿は何も受けなかった。

翌朝、
中央だけが
丸く白く抜けていた。
その他
公開:26/06/18 12:00
更新:26/06/18 11:54

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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