ほめ饅頭

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門前町の甘味横丁には、ほめ饅頭を出す茶屋があった。

饅頭を買うと、包み紙の内側に自分への言葉を書く。

よく起きた。よく働いた。

包みを開くころ、饅頭は少し甘くなる。

朝の客は、包み紙いっぱいに文字を詰めた。

昼には白い砂糖が机のすみに積もった。

夕方、杖の老人が来た。

女将は新しい包み紙を出した。

老人は筆を持ち、妻の名を書きかけた。

消した。

息子の名も、孫の名も、寺の犬の名も、墨の跡だけ残った。

包み紙の端には、「ご自身へ」と 刷られている。

老人はなぞった。

饅頭は湯気を失った。

閉店前、老人は白い包み紙を畳み、懐にしまった。

軒下で、寺の犬が尾を振った。

翌朝、女将が店先を掃くと、犬の足跡のそばに 白い紙が落ちていた。

裏には砂糖が薄く浮き、墨の跡はいくつもあった。

名のかたちだけが、乾いていた。
ファンタジー
公開:26/06/11 07:00
更新:26/06/11 07:26

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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