ほめ饅頭
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門前町の甘味横丁には、ほめ饅頭を出す茶屋があった。
饅頭を買うと、包み紙の内側に自分への言葉を書く。
よく起きた。よく働いた。
包みを開くころ、饅頭は少し甘くなる。
朝の客は、包み紙いっぱいに文字を詰めた。
昼には白い砂糖が机のすみに積もった。
夕方、杖の老人が来た。
女将は新しい包み紙を出した。
老人は筆を持ち、妻の名を書きかけた。
消した。
息子の名も、孫の名も、寺の犬の名も、墨の跡だけ残った。
包み紙の端には、「ご自身へ」と 刷られている。
老人はなぞった。
饅頭は湯気を失った。
閉店前、老人は白い包み紙を畳み、懐にしまった。
軒下で、寺の犬が尾を振った。
翌朝、女将が店先を掃くと、犬の足跡のそばに 白い紙が落ちていた。
裏には砂糖が薄く浮き、墨の跡はいくつもあった。
名のかたちだけが、乾いていた。
饅頭を買うと、包み紙の内側に自分への言葉を書く。
よく起きた。よく働いた。
包みを開くころ、饅頭は少し甘くなる。
朝の客は、包み紙いっぱいに文字を詰めた。
昼には白い砂糖が机のすみに積もった。
夕方、杖の老人が来た。
女将は新しい包み紙を出した。
老人は筆を持ち、妻の名を書きかけた。
消した。
息子の名も、孫の名も、寺の犬の名も、墨の跡だけ残った。
包み紙の端には、「ご自身へ」と 刷られている。
老人はなぞった。
饅頭は湯気を失った。
閉店前、老人は白い包み紙を畳み、懐にしまった。
軒下で、寺の犬が尾を振った。
翌朝、女将が店先を掃くと、犬の足跡のそばに 白い紙が落ちていた。
裏には砂糖が薄く浮き、墨の跡はいくつもあった。
名のかたちだけが、乾いていた。
ファンタジー
公開:26/06/11 07:00
更新:26/06/11 07:26
更新:26/06/11 07:26
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