最後の調律師

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王都の時計塔には、調律師という役目はなかった。

法令集のどこにもない。

それでも朝になると、片耳の悪い老人が油の染みた手袋で歯車に触れ、早すぎる鐘をなだめ、遅れる針を押した。

蒸気管が議会室へ伸びかけると、古い鍵束を鳴らした。

市民は言った。

「よくできた時計だ」

冬の朝、老人が来なかった。

役目ではないので、後任は置かれなかった。

鐘は五分早く鳴り、市場はまだ戸を開けていなかった。

昼には、針が二本とも上を向いた。

夕方、蒸気管が議長席の下から息を吐いた。

技師たちは設計図を開いた。

鐘の権限。

針の権限。

管の権限。

歯車の独立。

すべて書かれていた。

最後の欄だけ、白かった。

調整責任者名。
ファンタジー
公開:26/06/12 20:00

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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