夏の白鳥

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その池には、一羽の鳥がいた。
名をナールという。

「この池には凡庸な鳥しかいない」

ナールはそう言って、池の鳥たちを見下した。

「あいつは羽並みが悪い」
「あいつは泳ぎが下手だ」
「あいつは鳴き声が下品だ」

ナールは毎日、池の鳥たちの粗を探した。
誰も反論はせず、ただ黙ってナールの話を聞き流していた。

その年の冬。
一羽の白鳥が池に舞い降りた。
池の鳥たちは歓声を上げ、白鳥を出迎えた。
だが、ナールだけは鼻で笑った。

「首が長すぎる」
「大したことはない」
「気取っている」

白鳥は何も言わずに飛び去った。
ナールは、自分の方が美しいから逃げたのだと思った。

やがて池は静けさを取り戻した。
鏡のような水面に、鳥たちの姿が映った。
そこでナールは、自分の姿を見つめた。

そこに映っていたのは、夏に迷い込んだ美しい白鳥などではなかった。
薄汚れた醜いアヒルが一羽いるだけだった。
その他
公開:26/06/06 20:35

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。

作品イラストはフリー素材やAIで作成したものです。

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