特別登録

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門前町の甘味横丁には、
身近な相手を
特別登録する窓口があった。

登録すると、
記念日に花の札が届く。

申請書には、
好きな菓子。
雨の日の立ち位置。
黙る時の合図。
帰り道の歩幅。

男は杖を立てかけ、
迷わず妻の名を書いた。

菓子は豆大福。
雨の日は、
たぶん左側。
黙る時は、
たぶん疲れている。

係員は砂時計を返した。

「確認できる項目が足りません」

後ろで、
白い猫が女の足もとに
丸くなった。

付き添いの女が、
控えの紙を差し出した。

豆大福、半分。
雨の日は右側。
黙る時は腰を押さえる。
帰り道は急がない。

男の目は、
妻の名から動かなかった。

窓口の奥で、
印が鳴った。

保留。

帰り道、
女は男より半歩うしろを歩いた。

杖の音だけが、
先に曲がり角を過ぎた。

登録票の最後だけ、
まだ空いていた。

申請者名。
SF
公開:26/06/12 07:00
更新:26/06/09 05:57

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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