朝の言葉

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父は湯のみを置いた。

「彼氏はどういう人なんだ」

娘は箸をそろえた。

「台湾の人なの」

母は笑った。

「いいじゃない。お母さん、台湾のパイナップル好きよ」

父も少しだけ肩をゆるめた。

「それで」

「台湾語で、おはようって教えてくれたの」

母が身を乗り出した。

「何て言うの」

娘は嬉しそうに言った。

「早上好」

母の笑顔が、一拍だけ残った。

食卓の音が止まった。

父はスマホを伏せた。

母は戸棚のパイナップル缶を、そっと奥へ戻した。

「別れなさい」

「なんで」

父は湯のみを見たまま、しばらく黙った。

「……朝は、大事だ」

翌朝、冷蔵庫に紙が貼られていた。

家庭内あいさつ確認表。

おはよう。
おやすみ。
いただきます。

一番下だけ、母の字で書き足されていた。

パイナップルは保留。
その他
公開:26/06/09 07:00
更新:26/06/08 23:10

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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