殻を背負った日

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 蝸牛はかつて、居場所探しの長い旅に出ておりました。
 西へ東へ、山へ海へ。
 けれど何処へ行っても、かけられる言葉はみな同じ。
 「やあ、まいまい。紫陽花の花は一杯さ。どこかほかをあたってくれ」
 「ああ、でんでん。この蓮の葉は満員だ。どこかよそへあたってくれ」
 「はあ、つぶりよ。ここにお前の席はない。どこへなりとも行っちまえ」
 いろんなところでいろんな名前をもらっても、誰も蝸牛に居場所をくれはしませんでした。
 「いいんだよ。僕の居場所は、僕が背負うもの」
 そう言って、蝸牛は殻を背負うようになりました。
 その殻があまりにも重すぎて、尾を引きずるように歩みます。
 手も足も無くなっても、這って擦って回ります。
 こんな雨の日だったなら、涙も隠してくれるでしょう。
 殻を背負ったあの日から、蝸牛は雨の虫となったのでした。
ファンタジー
公開:26/06/06 00:00

鹿野 秋乃

毒にも薬にもならないお話ばかりです。

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