時効物件

0
1

「この家、安すぎませんか?」

内見に来た青年は、不動産屋に尋ねた。

「ええ、少々“曰く付き”でして」

山奥の古い洋館。百年以上前の建物とは思えないほど新しく、家賃も異様に安かった。

「昔、この家の住人に不幸が続き、いつしか呪いの館と呼ばれるようになりまして……」

不動産屋は苦笑する。

「まぁでも、『時効』ですから」

「時効?」

「もう、百年も前の話ですから」

青年はタチの悪い冗談だと思い、契約書にサインした。

数日後。
引っ越しを終えたその夜、青年は一階からの妙な物音で目を覚ました。
恐る恐る階段を降りると、廊下の奥に不動産屋が立っていた。

「何をしてるんですか?」

不動産屋は笑みを浮かべた。

「ご安心ください。もう、時効ですので」

その手には、古い斧が握られていた。

翌朝。
洋館は静けさを保っていた。

ただ、その姿は昨日建てられたように新しくなっていた。
ホラー
公開:26/05/21 23:03
更新:26/05/21 23:09

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。

作品イラストはフリー素材やAIで作成したものです。

note

https://note.com/a_kagami

X(Twitter)

https://x.com/kagami_short2?s=21

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容