行間に種を蒔く

1
2

「この行間なら《楽》の種じゃないんですか?なぜ《哀》の種を?」

袋の中で暗く光る涙形の《哀》の種を見つめ、先輩に尋ねる。

「う〜ん…私にも絶対にこれ!って確信はないし、書かれているそのままの明るさを取って《楽》の種も有りだけど…」

荷車に積まれたキャラメルポップコーンみたいな香りを漂わせる《楽》の種の詰まった袋をちらと見て先輩は続けた。

「登場人物が明るい事を言っている行だからって胸の内までそうとは限らない」

太陽の前を小さな雲が通過して、行間に一瞬の陰が射す。

「まぁ、そもそも最近の読者は忙しい人が多いから、流し読みと一緒に種も流されちゃって上手く育たない事も多いけど…」

いないいないばぁの様に雲から太陽の笑顔が戻り、行間にまた日が射す。

「さぁ!今日も元気に、流し読みされても種が流されない程丈夫な行間を耕しますか!」

先日耕した行間で《喜》の芽が弱々しく発芽している。
公開:26/05/19 22:03
行って畑の畝みたいだなって

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容