蛹吸い

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 そろそろ頃合いだろうと、目をつけていたカラタチの生垣を覗き込むと、蛹の上に蝶が見えた。
 「間に合わなかった」と落胆したのもつかの間、どうも様子がおかしい。蛹は揚羽蝶のものだ。だが乗っているのは揚羽蝶ではない。いや、そもそもこれは蝶なのか?
 ずんぐりとした身体。中学校のジャージみたいに薄汚れた緑色の翅。青と白の縞模様の口吻。そしてあろうことか、その口吻は蛹に深く突き刺さっている。どうやら蛹を吸っているのである。わたしがこれほど顔を近づけても逃げないのは、食事中だったからに違いない。
 「ふざけるなっ」
 わたしはそいつを握りつぶした。口吻から黄土色の体液が迸り、羽の付け根からは緑色の汁が噴き出した。地面に叩きつけて、何度も踏みにじった。
 「こんなものがいるのか。油断も隙もないな」
わたしは汚れた指をジャージで拭い、ポケットから青と白のストライプのストローを取り出して、蛹に突き刺した。
ファンタジー
公開:26/05/15 20:03

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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