ベストセラー作家

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街外れの小さな書店で、無名作家の空飛佐助が出した一冊の本が、ある朝突然ベストセラーになった。
題名は『裏返った空の国』。内容は、雨が地上から天空へ降り、人々は眠るたびに一段と若返り、猫が役人を務める奇妙な世界の話だった。

最初は誰も相手にしなかったが、読んだ者たちが口を揃えて、夢で続きが読めると言い始めた。しかも夢の内容は何故か全員同じだった。
やがて書店には行列ができ本も重版され、テレビ・新聞は連日特集を組み、海外でも翻訳版が飛ぶように売れた。
ところが、著者の空飛佐助は発売日の翌日には失踪していた。編集者によれば、原稿は古びた木箱に入って届き、そこには差出人も住所の記載もなかったという。
さらに奇妙なのは、本の最後の一行だった。
「この物語を最後まで読んだ者は、もう入口を知ってしまった。」読者たちは笑いながら本を閉じたが、その夜から街では、空に登り始める人々が増え始めた。
ファンタジー
公開:26/05/14 12:50

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