錆びた鍵

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日付が変わると使えなくなるクーポンを持って夜中に牛丼屋へ走ったのは半年前。
僕は巨体を揺らせながらドタドタと牛丼屋へ急ぐ。後ろから歩いてきた老人に抜かされる。
信号を待ちながら汗でベトベトしている僕の前に天使が現れた。
天使はスポーツウエアを身にまとい、爽やかな風と共に走り去っていった。
気がつくと僕は毎日同じ時間にドタドタと走るようになった。クーポンの代わりに自室の鍵だけを持って。
 古アパートの鉄製の鍵が僕の汗で錆びた頃、天使と再び出会うことができた。
天使は男性と一緒に楽しそうな笑みを浮かべて走り去っていった。

 スニーカーの紐を結ぶ。そういえば紐を結ぶのがずいぶん楽になった。
しゃがむとつっかえていたお腹の肉が今はつま先を隠さない。
 「何だかさびいしいね」
 扉を開けると眩しい朝日が出迎える。僕は新しい朝に駆け出した。
青春
公開:26/05/10 05:43

すけ3

日常がふっと壊れる瞬間の話を書いています。ご感想お待ちしています。
普段は山を走ったり、保護犬2匹と散歩したり、仲間とワイワイしています。

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