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参列者は皆、黒い布で全身を覆っている。
顔も、声も、仕草さえも、誰のものか分からない。
誰が決めたのかも、知らない。

冷たい風が吹き付ける。
フードが外れないよう、端を押さえた。

白い花が配られる。
名前は知らない。

甘い香りがした。

順番に棺へと向かう。
足音だけが、湿った土に沈む。

番が来る。
棺の中に視線を落とす。

細い薬指に、光が残っている。

─いつもそこになかった光。

一度、目を逸らす。
それでも、また戻る。

喉の奥で、名前がほどける。
呼んではいけない名前だ。

花を置く。
少しだけ、指先が近づく。
 
─指先が止まる。
 
それでも、震える指先が、一瞬だけ触れた。

フードを、深く被り直す。

決まりの通り、振り返る。
深く頭を下げて、列に戻る。

─顔を上げる。

震えたまま、列に戻った。
ファンタジー
公開:26/05/08 21:40

木村乃村( 日本 )

勉強中なので厳しくお願いします。

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