かたたたき
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四月の末頃、久しぶりに会ったお袋は、一回り小さくなっていた。
「お帰り。よう来たねぇ」
土産の紙袋をテーブルに乗せ、目を細めて手招くお袋の横へ膝をついた。
「肩たたきしてやろうか。昔渡した券、残ってるよな」
「そんな気ぃ遣わんと。あんたも仕事で疲れとろうに」
恐縮するお袋を制し、骨の曲がった背中をこちらへ向けた。――ひとぉつ。ふたぁつ。みっつ。子供の様に声に出して数えながら、痩せて筋張った肩を叩く。
小学校に上がった年の、母の日の贈り物だった。
チラシの裏にクレヨン書きの『かたたたきけん』を、お袋は宝物のように受取り、箪笥の奥へ仕舞った。結局十枚つづりの一枚も使わないまま、渡した俺自身もつい先日まで忘れていた。
「来年もたたいてやるから。再来年も、その次も、その次も……だから」
何度もおぶってもらった、まあるい背中に額を預ける。
点滴に繋がれたしわしわの手が、白髪頭をくしゃりと梳いた。
「お帰り。よう来たねぇ」
土産の紙袋をテーブルに乗せ、目を細めて手招くお袋の横へ膝をついた。
「肩たたきしてやろうか。昔渡した券、残ってるよな」
「そんな気ぃ遣わんと。あんたも仕事で疲れとろうに」
恐縮するお袋を制し、骨の曲がった背中をこちらへ向けた。――ひとぉつ。ふたぁつ。みっつ。子供の様に声に出して数えながら、痩せて筋張った肩を叩く。
小学校に上がった年の、母の日の贈り物だった。
チラシの裏にクレヨン書きの『かたたたきけん』を、お袋は宝物のように受取り、箪笥の奥へ仕舞った。結局十枚つづりの一枚も使わないまま、渡した俺自身もつい先日まで忘れていた。
「来年もたたいてやるから。再来年も、その次も、その次も……だから」
何度もおぶってもらった、まあるい背中に額を預ける。
点滴に繋がれたしわしわの手が、白髪頭をくしゃりと梳いた。
その他
公開:26/05/11 18:03
ラジオ『月の音色』
月の文学館
テーマ:まあるい背中
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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創樹