猫背を飼う

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「あ、また猫飼ってる」
椅子の背もたれごしに指摘され、読みかけの本から顔を上げた。
「背中まん丸。気を付けないと、そのまま固まっちゃうよ」
「はいはい、以後気を付けます」
小言モードの彼女を適当にあしらい、前傾ぎみの背中を起こす。座面に浅く掛け直し、指を挟んだページを再び開いた。
「普段は姿勢良いのに、そこ座ると猫背になるよね。何か憑いてんじゃないの?」
「さあね。案外、前世が猫だったのかも」
あきれ顔で肩をすくめる彼女に合掌し、猫舌加減にぬるまったホットミルクをいただく。
実家の大掃除のついでに引き取った、半分粗大ゴミみたいな椅子だ。木製のフレームもクッションも傷だらけで、ぴかぴかの新居に似合わない事この上ない。

見るからにおんぼろだけど、あいつのお気に入りだったもんな。
うーんと伸びをして、読み終えた本を枕にテーブルへ寝そべる。
まあるくなった背中の上を、鈴音がチリンと過ぎていった。
ファンタジー
公開:26/05/11 18:02
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:まあるい背中

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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