切腹×解釈

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上方で十年の修行を終え、親父が営む江戸前の鰻屋へ戻ってきた。
帰郷の挨拶もそこそこに、たらいで跳ねる鰻を突き出されて腹が立った。
本場の有名店で焼き方まで務めた俺に向かって……。丸々と肥えた、活きの良い一尾をまな板に乗せ、手早くさばいて串を打った。見せつける様に炭火で炙り、タレを塗って蒲焼きに仕立て、突き返す。

息子の作品に、親父はろくに口もつけず、箸でつまんだ蒲焼きをくるりと輪っかに巻いてしまった。
「0点だ。江戸前のお客に切腹鰻が出せるか」
うなぎ上りだった自信が、その一言でぺしゃんこになった。
関東の背開きと関西の腹開き、鰻屋なら初歩の初歩だ。己の油断と慢心を見透かされ、黙ってうつむく俺に、親父が湯気の立つどんぶりを差し出した。
「だが、それ以外は合格だ。新米らしく、まずは飯炊きから出直せ」
「……へい、大将!」
辛くて甘い、皿の上の丸印を噛みしめ、熱々の飯を口いっぱいに頬張った。
その他
公開:26/05/11 18:01
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:まあるい背中

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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