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見られている。
直感的にそう感じたのは、生い茂った葉が、それを支える木の幹が、周りに広がる花と雑草が、風もないのに揺れているから?
さきほどから、耳元でじりじり音がする。耳鳴りか。それとも虫の羽音か。
ここにあるのは、大きな木が数本。手入れのされていない花。奥に、木材でできた古い小屋。人の気配はない。どこにもない。それなのに、誰かが、あるいは何かが、ずっとこちらを見ている。常に誰かと目が合っている。
 おかしいのはどっち?
 頭が痛い。きっと、上からも見られている。
ようやくここにたどり着いたのに。誰もいない、何もない、せっかくここを選んだのに。どうして、こちらを見てくるの?
小屋の窓がカタカタ鳴った。大きな目玉がふたつ、覗いているんだ。ドアが開く。屋根がガラガラ嗤ってる。
私は誰。何もないからわからない。文字が読めないからかしら。
でも、一つ言えることがある。
あなたは私の後ろにいるの。
その他
公開:18/07/27 17:54

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