眠りふたご姫

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無数の林檎の樹に囲まれて、エレナとヘレナは寄り添うように樹にもたれかかっていた。
「ねぇ、ヘレナ」
「なぁに? エレナ姉さま」
「あの絵を思い出さない? 小さい頃に美術館で一緒に見たあの絵」
「クリムトの『北オーストラリアの農家』でしたっけ?」
「そう。ここに絵に描かれているような家があったら素敵だと思わない?」
「確かに素敵……」
エレナはヘレナをそっと抱き締める。
「姉さま……良かったら少し寝よう?」
「そうね……今ならいい夢が見れそうだわ」
「私、あの絵みたいなところの夢が見たいな……たくさんの果樹があって……家があって……そこで姉さまと仲良く暮らすの……」
「とっても素敵ね……私も見たいわ……」
「そこなら、病に怯える必要はないよね……ねえさま……」
「そうね……ヘレナ……」
エレナとヘレナは抱き合うように眠りについた。
どうか二人に永久の安らぎが訪れますように。
その他
公開:18/07/27 14:22

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