窓辺の花

　また、あの人がこちらを見ている。裏庭の木陰にイーゼルを立てて。日差しがだんだんと西へ傾く刻限の、いつも決まってほんの半時。あの人は、大きな影の一部となった暗い部屋の、カーテンもない小さな窓からそっとのぞく私を見ている。
　あの人が、カンバスに叩きつけるように描く絵の中で、私はどんな風なのだろう？
　今日は裏庭で摘んだ花を、蒼い硝子の花瓶に挿して、あの人が立ち去る寸前の陽光が、黄金色に照らし出してくれる窓辺へ置いてみた。あの人はきっと、この美しい色彩の調和に感嘆しながら、帰る時間を少しだけ延ばして、くすぐるように絵筆を操るだろう。息をつめて、やさしく、私の花を撫でてくれるだろう。
　だから私は、これから毎日、花の尽きることのないようにしよう。私は、あの人と鉢合わせにならないように十分な節度もって、この花に水をあげよう。
　いつかあの人が、私がたたずむこの窓を、優しく叩いてくれるその日まで。