北オーストリアの農家1911-12

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「当時、イケイケだったんですよ、オーストリア。なのにクリムトはすっかり元気をなくして、絢爛豪華な黄金と女という作風をやめて、こんな地味な農村風景なんて描いている。だけど、この間、この手の庭の絵が67億でしたっけ? なんでそんな高値がついたんだと思います?
 ここだけの話ですよ。クリムトはスキャンダラスな生活と作風のせいで、公的な援助を打ち切られてしまって、隠遁生活に入ったというのは表向きの話でね。たくさんのモデル兼愛人に貢がせるだけ貢がせていて、生涯使い切れないほどの財産をもって、田舎へ引っ込んだのだといわれています。で、羽振りがよかったころに培ったさまざまなパイプから、開戦が近いことを、彼は聞き及んでいたんです。ここまでいえばわかりますね?
 隠し財産ですよ。
 その隠し場所のヒントになるのが、この一連の農家シリーズなんです。
 私には難しすぎる謎なんでね。お譲りしますよ。3億で」
その他
公開:18/07/27 10:37

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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