北オーストリアの農家

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黄色と緑が好きだった。
だから「北オーストリアの農家」だった。
この場所は、木々や草花が揺らめき、僕を自然の中に解き放ってくれるのだ。
目を閉じる、それだけで目前に光景が、広がっていく。
僕は名も知らぬ白い服を纏った少女と草花の中を駆け巡り、木の上に乗って木の実を
齧る。味は甘すっぱい柑橘系で二人で微笑む。
突然、どこからか声が聞こえる。
「違う、こんなの私が望んだものじゃない」
その声はどこか愛しさと残酷さを感じさせ、僕も彼女も怯えた。
「私、怖い、怖いよ」
ふるえきった彼女を僕は抱きしめる。
僕の世界は、景色は、赤くなり緑になり白くなり、
抱きしめていた彼女までもが白くなり、僕も気が付けば白くなっていた。
あの声がまたやってきた。
「ここに人なんていらないんだ」
一瞬で、なんでか僕はいなくなることがわかった。
ありがとう、少女と出会わせてくれて。ありがとう、僕らの神様。
青春
公開:18/07/25 20:32

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