毒の話

私が昔、毒だった頃、兄は孤独だった
ラインは未読、着信はゼロ、口説く相手もいなかった
だから、やけ酒を飲み過ぎてアルコール中毒になった
近所のおばさん達は、まあ、気の毒にと薄っぺらい社交辞令の毒を吐いた
私は、このままで駄目だと思った
そこで兄を社会復帰させるために、お笑い単独ライブをする事にした
勿論、主役は兄である
ライブは、盛況だった
ファンだと言う女の子達からは、一生、応援しますと言う内容のファンレターが何枚も届いた。兄は一枚一枚、拝読し、返事を書いていた

あれから五年が経った
兄の人気は落ち、ぱったり、ファンからの手紙は来なくなった
きっと彼らはもうお亡くなりになったのだろう

それが理由なのか、兄は部屋で服毒自殺を決行した
それを見つけた私は慌てて消毒液を兄の口にガブガブ飲ませた
でも、よく見てみたら、ラベルに青酸カリと書かれていた
後に刑事は言う
なんて独創的な犯行だと