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クリムトの生涯を巡るツアーに参加して3日目。私は眼前の景色に興奮を抑えきれなかった。間違いなく「北オーストリアの農家」だ。草花も青い家も全てがあの絵とそっくりだ。その感動はツアー初日に顔の部分だけくりぬかれた「接吻」の顔出しパネルを見た時のガッカリ感を吹き飛ばしてくれた。ガイドによると、家のベンチに座ると花畑の奥から絵と同じ構図で写真を撮ってくれるらしい。
しかし、順番待ちを終えてようやくベンチに座った時に私は気づいた。この壁は木じゃない。プラスチックだ。絶妙な塗装で古い壁を再現していた。落胆したが、よくある事と思い直す。日本にだってエレベーターがあるお城は沢山ある。
でもあの花は本物だ。
だってほら、目の前を蝶が横切っていくじゃないか。キィキィと音を立てて…。
その蝶を猫が追いかけてるじゃないか。ウィーンと音を鳴らして…。
あ、あの花は本物なのか?
ここは本当にオーストリアなのか?
しかし、順番待ちを終えてようやくベンチに座った時に私は気づいた。この壁は木じゃない。プラスチックだ。絶妙な塗装で古い壁を再現していた。落胆したが、よくある事と思い直す。日本にだってエレベーターがあるお城は沢山ある。
でもあの花は本物だ。
だってほら、目の前を蝶が横切っていくじゃないか。キィキィと音を立てて…。
その蝶を猫が追いかけてるじゃないか。ウィーンと音を鳴らして…。
あ、あの花は本物なのか?
ここは本当にオーストリアなのか?
その他
公開:18/07/25 12:54
更新:18/07/25 14:44
更新:18/07/25 14:44
月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。
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