マロニエのへのへのもへじ

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「また叱られる」
 僕は、マロニエ並木の交差点で、信号待ちをしながら幾度もリュックの中身を思い出してみた。なぜだろう。昨夜は全く思い出せなかった今日の時間割が、自転車通学途中の、もうあの坂を登り終えたところが校門だという間際になって、突然思い出されてしまった。
 へのへのもへじの形でだらだらと続く上り坂を、冬服の隊列が登って行く。一面に薄い黄色の山間に、こうして、朝の登校風景の、ある瞬間にだけ、墨汁みたいにてらてらとしたへのへのもへじが現れる。
 僕の目にありありと映る今日のへのへのもへじは、心なしか眉が吊り上がり、唇に引き攣れたような笑みをたたえている。
 目の前を黄色のバスが通り過ぎた。最後部の席を占領していた体操部の同級生が、僕を指差して笑っていた。
 バスの尻がへのへのもへじをなぞり始める。信号はまだ変わらない。
青春
公開:18/07/25 10:14

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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