エモノ語り

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美術館でエモノを捕まえる仕事をしている。
絵がいつもと違って見える時は、中に「絵物」が紛れ込んでいる時だ。
カメレオンのように絵画と同化する「絵物」は形や大きさも様々で、鳥や魚、猫や馬など人によっても見え方が違うらしい。

見つける方法としては違和感がある場所をじっと見つめるだけだが、そのうちに目が合ったり、少しだけ動いたりすることもある。
見つけたらすぐに絵の中に入って捕まえに行くのだが、外と中では見え方が違うので簡単には捕まえられないことが多い。

今回の絵画も、花畑の中に「絵物」がいたはずだが、なかなか見つからない。
全体を眺めるとキレイな花畑なのに、花に近づくと筆のタッチが現れるのでどこを見ているのかよくわからなくなってしまうのだ。
仕方ない、とため息をついて数秒だけ目をつぶる。

ざわり。

吹くはずのない風が、頭上の木の葉を揺らした気がして目を開ける。
よく目を凝らすと――。
その他
公開:18/07/26 10:42
クリムト 北オーストリアの農家

天宵 遥

言葉遊びや少し不思議なお話が好きです。
SSGプチコン1「花」優秀賞入賞

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