農家の家庭

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「なんでその絵にしたの?」
夫が私の持ち帰ってきた絵画、『北オーストリアの農家』に興味を示した。
「この絵から農家の人の温かい家庭を感じて...私たちもそうなりたいなって思ってね」
黄色の花が咲いた木と肌に優しく触れる草むらの奥に淡い青色の小屋が佇んでいる絵画だ。
「ふーん。そんなの分からないよ。その木は伸び放題で邪魔だし草むらは所詮雑草だし奥の小屋は豚小屋かもしれない」
夫の悲観的な性格にはもう慣れた。
「そんなことないよ。農家の奥さんは『こんな木切りたいわね』って笑ってるし、『あなた草むしりしてよ』って夫に話してるし、その日の晩ご飯はきっと豚の生姜焼きだよ」
「オーストリアで豚の生姜焼き?」

ドアが開き、娘が来た。
「何この絵?もう少し木も雑草もさっぱりさせるべきだよ!」
「確かにね、今日の夕飯は豚の生姜焼きにしましょう」
笑う夫と不思議そうにする娘を後ろに私はキッチンに向かった。
その他
公開:18/07/26 02:29

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