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家に帰ると、ダイニングの壁に絵が懸けてあった。
「どうしたの、これ」
「これ? 今日買ってきたんだ」
彼女の声は、はしゃいでいた。テーブルには、彼女が休日のときに作る少し豪華なディナーが湯気を立てている。
「シャワー浴びてくるよ」
「うん」
僕は頭から水を被りながら「あまりパッとしない絵だな」と思った。
「構図が平板だし、色もモチーフも地味だ。せいぜいQUOカードか図書カード? どうせ、またボツだな」
画家があの絵を描こうとした動機も、彼女があの絵を選んだ理由も、僕の今の仕事に対する適正も分からないまま、僕は浴室を出た。
彼女が、冷蔵庫からビールとグラスを取り出して食卓へ並べた。
「乾杯しよ」
「あ、ああ」
―何かあったのか?
と聞く事は絶対にできなかった。聞けば二人の間の何かが、崩れるような気がしたから……
グラスを合わせた直後、彼女の頬を涙が伝った。長い夜が始まった。
「どうしたの、これ」
「これ? 今日買ってきたんだ」
彼女の声は、はしゃいでいた。テーブルには、彼女が休日のときに作る少し豪華なディナーが湯気を立てている。
「シャワー浴びてくるよ」
「うん」
僕は頭から水を被りながら「あまりパッとしない絵だな」と思った。
「構図が平板だし、色もモチーフも地味だ。せいぜいQUOカードか図書カード? どうせ、またボツだな」
画家があの絵を描こうとした動機も、彼女があの絵を選んだ理由も、僕の今の仕事に対する適正も分からないまま、僕は浴室を出た。
彼女が、冷蔵庫からビールとグラスを取り出して食卓へ並べた。
「乾杯しよ」
「あ、ああ」
―何かあったのか?
と聞く事は絶対にできなかった。聞けば二人の間の何かが、崩れるような気がしたから……
グラスを合わせた直後、彼女の頬を涙が伝った。長い夜が始まった。
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公開:18/07/25 22:40
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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