DARK RED

6
62

その男は森を彷徨っていた。方位磁石を頼りに道無き道を進むと、辺りに異変を感じ始めた。全てが淡いブルーに変貌していくのだ。方位磁石がぐるぐる回りだし、慄いた男は来た道を引き返そうと駆け出すと、前方に古ぼけた青い家が忽然と現れた。
男は窓から恐る恐る中を覗くと、美しい女がキャンバスに向かい筆を走らせていた。
女は微笑み手招きをした。中に入るとキャンバスには青い森の風景画。
女は何も語らず男に寄り添ってきた。男は、黙って抱きしめてやると、女は唇を求めた。唇が重なった刹那、女の姿は霧のように消え、突然、部屋中が闇に包まれると、男は滑落していった。
地面に叩きつけられた男は呻き、天を仰ぐと、床の隙間から女が覗き込みケラケラ笑っている。
「絵の具が足りないの。赤が、足りないの……。」
女はそう言い、隙間を閉じた。

「う、うわぁあぁぁぁぁっ!」

無数の髑髏から蛭の群れが現れ、男に襲いかかっていった。
ホラー
公開:18/07/23 22:31
更新:18/08/30 22:42
青い家 美女 絵画 絵の具 蛭(ヒル) 青い風景画 髑髏(ドクロ) DARK RED

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容