霧の虹

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 私は、深夜の山間に車をとばしていた。道が上下に分かれる処で、ぼんやりと滲む赤い光が、斜面に被さる滑らかなコンクリートに彩りを添えていた。気がつくと車は停まっており、青い制服の者達が数人、こちらに注意を寄せている。
「なんなのです?」
 そう尋ねた先から、私にはもう、「霧の虹」が出現しているのだということが分かっていた。
 眼を上げると、青い男は元の位置に戻ってしきりと首を傾げている。私は車を降りて、斜面を抉るように建っている和風住宅の、二階の高さにあるガードレールに硬い尻を乗せ、忘れさられた洗濯物の翻るのを眺めている。
「climateよりweatherの方が適切だ…」
 私がそんなことを考えている間に、色の黒い女が洗濯物を取り込んで、暗い室内に引き下がっていった。
 私は落胆して車に戻り、サンルーフを開けて空を仰いだ。そこにはペンキ絵のようにはっきりとした虹が、二重になって映っていた。
ファンタジー
公開:18/07/24 22:05

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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