国道の妻

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田崎さんの旦那さんが交通事故で亡くなった。最近では珍しく、叩けば伸びるタイプの逸材で、上下関係なく会社で愛された人だった。
「田崎さん、この度は……」
他に言葉も思いつかず、私がそう声を掛けた時の奥さんの表情は、とてもぼんやりとしたものだった。
あれから三年、田崎さんに私はばったり出会った。働き始めたらしく、しっかりと身綺麗にしていて驚いた。
「くよくよしていられません。旦那が見てますから」
そう話す田崎さんはとてもイキイキとしていて、私は安心した。
「でもそんなにお綺麗じゃあいいお話もくるんじゃないですか?」
「駄目ですよ、旦那の前です」
なんだか話が妙だと思い、黙り込む私に田崎さんは笑った。
「あの事故以来、旦那はあの国道で伸びっぱなしなんです。毎日車に轢き叩かれるから広がり続けて。もうどこまでが旦那かわかりません。あそこ、旦那の潰れた白目が見えるでしょ?だから私、一人じゃないんです」
ホラー
公開:18/07/24 20:30
一行怪談から ギャグかホラーで迷った話

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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