グスタフ・クリムト「北オーストリアの農家」

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この街に引っ越して十余年。
都会の喧騒に心地よさを感じ、ビルの隙間から覗く四角い空に安らぎを覚えるようになった。
一日の仕事終わりに、街の中心部に位置する喫茶店にノートパソコンを広げ、挽きたてのコーヒーを味わう。
こんな瞬間にだけ、木造校舎裏の木々や、舗装されていない大地に咲き誇る花々、そういった懐かしい映像が脳裏を過り、そのたびに慌てて首を横に振る。
夢を追い辿り着いたこの街で私は黄金のように強く輝く。そう決めたのだ。

店の戸が開き、二人の青年が店に入ってきた。
二人はいかにも都会の若者といった様子で、それぞれ慣れた様子で商品を頼むと席についた。
「あの絵、何だっけ。」
「小学校の階段に飾ってあったやつだろ。よく覚えてたな。」
私もつられて壁の絵に目を遣る。
なんてことはない、名画の模造品だ。
しかし、目前のパソコンには、故郷へ帰るための切符を購入したというメッセージが表示されていた。
その他
公開:18/07/23 14:11
更新:18/07/24 17:53

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

登場することが趣味です。

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