世界からの脱出

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人口が下降傾向にあるというニュースを聞いてはいたが、私には街が人々で溢れかえっていたという記憶が確かにあった。

いつの頃からか、街を行き交う人々が少しずつ減っているような気はしていた。
そのうち自分のクラスの人数があきらかに減り始めていることに気がついた。誰が居なくなっているのかはさっぱり分からなかったけどね。
最後には誰も居ない教室で独り授業を受けていたので、学校に行くのをやめた。
その頃には街に出ても人にあうことは滅多になくなった。家に居たはずの誰かも居なくなり、大きな木造の家には私独りで住んでいる。
街外れの脳病院でも診てもらったが、
「いいかね。もともと世界の人口は今ぐらいだし、疲れた君の脳が生み出した妄想なんだよ」
と、云われた。

そんな内容が殴り書きされた自分の日記を見つけたのだが、世界に自分独りしか居ないというこの現実が、私の妄想の産物だとは思いたくなかった──。
SF
公開:18/07/23 02:21
更新:19/12/16 14:54

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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