夏取り線香

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ふらりと立ち寄ったホームセンターで、とある商品を買った。
その商品というのは、“夏(か)取り線香”と言う。蚊ではなく、夏が取れるらしい。

さっそく、夏取り線香に火をつける。なんだか、潮風の匂いがしてきた。

しばらくすると、夏取り線香の周りに、何かがふらふらと飛んでいた。どうやら、それは夏取り線香の香りでやってきた“夏”のようだった。
“夏”は弱々しい声で僕に命乞いを始めた。
「お願いだ、消さないでくれ…」
「消しやしないさ。俺らはお前が好きなんだ。でもな、今年のお前のテンションの高さにはうんざりなんだ!そのせいで、猛暑日が続いているんだ!!」


「…わかったよ。冷夏になれるように頑張るよ」

「約束してくれ!じゃないと、困るんだ!だって、俺の大学には…エアコンがないんだ!毎日、命がけさ!」



次の日、気温が低下し、少しは過ごしやすい日になったのだった。
公開:18/07/22 23:28

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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