卒業アルバム

2
54

引っ越しのために部屋中をひっくり返していたら、押し入れの奥から、卒業アルバムが出てきた。反射的に顔が歪む。
思うに、卒業アルバムほど高く不要でかつ不快なものなんて、そうそうない。
何も新婚の新居に、こんな縁起の悪そうなものを持ち込むこともないんじゃないか。いっそこの機会に捨ててしまおうか。思いながら持ち上げると、外箱から中身が滑り落ちた。
開くつもりなんてなかったのに、落ちた拍子にパラパラとページが捲られていく。
瞬間、僕は奇妙な感覚に陥った。
先程までは禍々しいとまでに思ったアルバムが、なんの変哲もないただの冊子に見えるのだ。
戸惑いつつも、とりあえず拾おうと手をかける。するとアルバムはピカっと閃光を放ち、黒い渦やガラスの欠片のようなものをそこら中に弾けさせ、跡形もなく消えてしまった。
呆気にとられていると、ふいにスマホが鳴った。
『片付けは順調?』という、妻からのメッセージだった。
その他
公開:18/07/20 19:42
ランダムキーワード 解放する卒業アルバム

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容