お腹いっぱい

「お腹へったー」
　隣を歩くみっちゃんが呆けた顔をしている。
「雲が食べられたらなー」
　何馬鹿を言ってるの？　そう思ったけど
「仙人って霞を食べられるらしいよ」
　作り話と知りつつも乗ってみる。
「それすげぇな、お金要らないじゃん。しかも食べ放題」
　眼がキラキラしてる。
　みっちゃん食べるつもり？
「将来の夢は仙人にしよー」
　そんなノリでいいの？
「お前も仙人になれよ」
「いいよ、私は」
「なんだよ、一緒に腹いっぱい食べようぜ」
「私には無理だから。みっちゃんがなればいいよ」
　私は苦笑いをして答える。
「そっかー、ならないのかー、じゃあ俺もいいや」
「なんで？」
「だって、お前と一緒じゃなきゃどれだけ食べても美味しくなさそうだからさ」
　そう言って道端の石を蹴り始める。
　無意識に言ってるんだろうなぁと思いつつも、悪くはない気分。一緒に仙人になったら私も美味しく食べられるのかしら？