ユメイリ

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「夢の中に入れるというのは本当ですか」
父親が所有していたはずの絵画が見つからず、もしかしたら父親の夢の中に何か手がかりがあるのではと息子が相談に来た。
数日後その屋敷を訪ねると鼻から管を入れられた老人がベッドの上で虚空を見つめていた。
ユメイリは使っている枕が必要なので老人の枕を借りて横になり夢に入った。
絵画と同じ、緑と花に囲まれた水色の家があった。窓からそっと中を覗くとあの老人がいた。老人は蒼い目の恋人と幸せそうに見つめ合っていて、木々はその許されざる関係を覆い隠すように生い茂っていた。
「これといって」
夢から出ると嘘を言った。
手がかりはあった。老人と恋人はその絵画を想像上の住処として愛でたに違いない。
部屋を出る時に老給仕と目が合った。
深い悲しみを湛えた蒼い目。
老給仕がゆっくりと頭を下げた。
絵画は持つべき人の手にあるべきなのだろう、そんな事を考えながら屋敷を後にした。
ファンタジー
公開:18/07/19 16:58
更新:18/08/10 09:06

杉野圭志

元・松山帖句です。

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