いや、だからさ、分かるか?

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「向こうに家が見えるだろう?」
「それは本当に家かい?」
「木の板が水色に塗られて窓もあるんだよ?」
「ただの壁なんじゃないのか?」
「中に本棚が見える。本を置くのに屋根が無い事は無いだろう?」
「それは本当に本棚なのか? 私には家の中にも庭があるように見えるよ」
「もうどっちでもいいよ、その手前に木があるだろう?」
「それは本当に木なのかい?」
「おいおい、そこまで疑うのか? 真っすぐに伸びて枝があって葉があるんだ。なんだっていうんだい?」
「あれは鳥だよ。動物の足なんだ」
「何を言っているんだ。どう見たって木にしか見えないじゃないか」
「いや、あれは動物だね。だって根本は草原に隠れて何も見えないだろう?」
「お前こそ何を言ってるんだ、どこに草原があるんだよ。あれは海だよ」
「え、海?」
「電話越しじゃ埒が明かないな、今からそっち行くから」
 まもなく、水色の壁から友人の姿が見えた。
その他
公開:18/07/19 14:01
更新:18/07/23 23:30
北オーストリアの農家

空音ココロ( blue in the black )

ショートショートは星新一さん、筒井康隆さんが好き。
空を見上げてぼーっとするのも好き。
抑揚のない平らな脳みそで
蜘蛛の巣を徘徊しながら思い付きで生きています。

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