活字サーフィン

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蝉の鳴き声をBGMに、海で夏の思い出作り!という訳にもいかない我々学生は、市立の図書館に籠って作文用紙と睨めっこをしていた。
夏休みの課題の中で一、二を争う強敵...そう、読書感想文だ。読んだ本の感想を言語化して他人に説明するのは容易いが、それを文章としてわかりやすくとなると話は別だ。
文の細部までじっくりと読み、作者の意図を解釈して自分の意見を述べる。理屈ではわかっていても難しいのだ。
泣き言を並べても状況は変わらないので、腹を括り、図書館で借りた本の頁をパラパラと捲る。借りた本は江戸川乱歩の『人間椅子』。
椅子職人、奥様に届いた手紙...湯水の如く頭に流れ込む活字はビックウェーブと言っても良いだろう。
サーフボードを片手に文字の波に乗ろうと次の頁を捲った瞬間、隣で派手な音がした。
横に座っていた同級生が椅子から転げ落ちたのだ。
「どうしたの?」
「ニーチェの波には乗れなかったよ...」
その他
公開:18/07/20 18:38

あべかわ

思いついた時にぼやぼや書いてます

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