父発義父行
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好きだつた人の夢を見た。
その人の家に私は居た。その人は長年父親から虐待的の扱ひを受けてをり、遂に堪り兼ね文字通り目の前で私と電車に飛び乗つたのだつた。
興奮が治まるとその人は私に凭れ、私が車内の商店街などを案内してゐる内に私の家に着いた。
その人は再び私に凭れると今度は今までの事などを思ひ出して泣くのであつた。私がその人を後ろから抱きしめて頭を撫でると少し落ち着いてきたやうで、暫くするとご飯食べよう、と云つて笑顔を見せた。
なんて幸せなのだらう。
しかし義父の頸が私に仕事はどうするのだとか何とか問い詰めてきたので、私は少々ウンザリしつつ、文筆の仕事で遣つて行く、その覚悟などを説くと驚いたことに義父の頸は涕を流して認めてくれたのであつた。
目を覚ますとその人は居なかつた。私はホツとした。それで良い。義父の頸も勿論無い。いつも通り見知らぬ人間の身体が転がつて居るだけだつた。
その人の家に私は居た。その人は長年父親から虐待的の扱ひを受けてをり、遂に堪り兼ね文字通り目の前で私と電車に飛び乗つたのだつた。
興奮が治まるとその人は私に凭れ、私が車内の商店街などを案内してゐる内に私の家に着いた。
その人は再び私に凭れると今度は今までの事などを思ひ出して泣くのであつた。私がその人を後ろから抱きしめて頭を撫でると少し落ち着いてきたやうで、暫くするとご飯食べよう、と云つて笑顔を見せた。
なんて幸せなのだらう。
しかし義父の頸が私に仕事はどうするのだとか何とか問い詰めてきたので、私は少々ウンザリしつつ、文筆の仕事で遣つて行く、その覚悟などを説くと驚いたことに義父の頸は涕を流して認めてくれたのであつた。
目を覚ますとその人は居なかつた。私はホツとした。それで良い。義父の頸も勿論無い。いつも通り見知らぬ人間の身体が転がつて居るだけだつた。
SF
公開:18/07/20 08:16
1978~。西成郡勝間村の人。単家、布衣の人。短時間労働者。即興演奏者。
俳句雑誌『奎』同人。
2022年イグBFC3優勝(同着)
https://twitter.com/ConchHailuo
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