穏やかな生活

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幸せかと聞くあなたは何を期待したのか。家畜らとボロ小屋で暮らしている。あいつらはブーブー、そいつはモー。こいつのタマゴを茹で、そいつの乳を吸う。そして、一九〇〇年頃だったろうか、キャンバスに筆を入れた。この穏やかな生活を描いておくのも悪くないと思ったのだ。マゼンタはそいつの健康的な血、シアンはあいつを絞めたチアノーゼ、イエローはこいつのタマゴ。私は幾度も色を重ねた。絞めたなら勿論いただく。肉は代謝を活発にし、皮は身体を温めた。臓器は冷凍保管しよう。いずれ役立つと直感したのだ。長生きを望んだことはないが、死を急ぐ必要もなかった。春は春の色、秋は秋の色、キャンバスは生命体のように表情を変えた。気づけば、色を重ねはじめてから一世紀を越えた。孤独を感じたことはない。実際、孤独ではないのだ。臓器のほとんどはあいつらのものと入れ替えた。そして、皮だって同じものを羽織っているのだ。
ファンタジー
公開:18/07/19 23:03
更新:18/08/05 20:35

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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