閻魔の裁き

ここは地獄の一丁目、閻魔様の裁きの場である。
｢次の罪人を通せ！」
一羽のカラスが入ってきます。
｢貴様は何の罪でここへ来た」
｢人間の捨てたゴミ袋を荒らしました」
｢ふむ。生きる為にはしゃあないな。お前は天国行きじゃ」
｢ありがとうございます！」
｢次！」
一匹の熊が入ってきます。
｢貴様は何の罪でここへ来た」
｢狩人から身を守るため、人間を少々──」
｢ふむ。正当防衛やな。天国行きじゃ」
｢ありがとうございます！」
と、こんな調子で次々と裁いていきます。

そこへ男の順番がやってきます。
この男、人間の中でも善人で通っていましたが、ちょっとした手違いでこの地獄のお白州に送られてきたのです。
｢次の罪人を通せ！」
男はおずおずと閻魔様の前に出てきました。
｢お前は人間か？」
｢はい、そうでございます！」
と応えた途端、閻魔様がアゴで合図を送ると、男は地獄の奥底へと堕ちて行きました──。